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こんにちは、つつみ百貨店、更新担当の中西です。
さて今回は
つつみ百貨店のトピック~お盆の歴史~
お盆は「祖先の霊を家に迎え、無事に送り出す」年中行事。仏教の教えと日本古来の祖霊観、さらに中国由来の歳時が重なり合い、千年以上かけて今のかたちになりました。ここでは、その歴史の流れと習俗の意味を整理し、仏事業の現場で役立つ視点まで掘り下げます。
目次
お盆の源流は仏典『盂蘭盆経』(うらぼんきょう)に語られる逸話にあります。目連尊者(もくれん)が飢え苦しむ母を救うため、陰暦7月15日に僧へ飲食を施したところ救済された――という「施し(供養)」の物語です。
この「盂蘭盆会(うらぼんえ)」が中国で定着し、日本には飛鳥〜奈良時代に伝来。宮中や大寺での年中行事として受け入れられ、やがて在来の祖霊信仰(先祖の霊が夏に帰ってくるという観念)と合体して、家々で先祖を迎える行事へと民間化していきます。
奈良・平安期:国家仏教の保護下で寺院儀礼としての盂蘭盆会が整います。同時期、中国の道教由来の「中元(ちゅうげん)」が日本へ入り、後に贈答文化(お中元)として定着。宮廷・貴族社会での供養と歳時の二つの流れが、のちの民俗へ種をまきます。
中世(鎌倉〜室町):浄土教の広がりとともに「念仏踊り」が各地で盛んになり、祖先を慰める踊りとしての盆踊りが形成。疫病・天災の鎮魂を願う**御霊会(ごりょうえ)**とも響き合い、夏の共同体行事へ発展します。
近世(江戸):檀家制度が整い、棚経(たなぎょう)、盆棚(精霊棚)、盆提灯など家内供養の様式が全国へ普及。村落共同体では迎え火・送り火、灯籠流し、盆踊りが年中行事として定着し、商業都市ではお中元が流通・商いを活性化させます。
近代〜現代:明治の改暦(太陽暦採用)により、日取りが地域で分岐。都市部は新暦7月盆、農村部は旧暦基準の8月盆(旧盆)を保つ傾向が生まれました。戦後は交通網の発達で帰省・お盆休みが社会慣行に。都市化と核家族化の中でも、墓参・法要・地域の盆踊りは「ふるさと」と家の記憶をつなぐ役割を担い続けています。
迎え火・送り火:祖霊が迷わぬよう、玄関先や墓地で火を焚く。京都の五山の送り火はこの思想の象徴的スケール。
盆棚(精霊棚):位牌や供物を飾る仏壇外の祭場。真菰(まこも)やほおずき、生花、果物・団子などを供え、祖霊を“家へ迎える席”を整える。
精霊馬(しょうりょううま):きゅうりの馬・なすの牛。早く来てゆっくり帰る(馬は俊足、牛は荷を引く)という祈りを具象化。
盆提灯:祖先の目印となる灯り。**初盆(はつぼん/新盆)**には白提灯で清浄を表す習慣が広い。
盆踊り:念仏踊りや鎮魂の舞が起源。都市では観光・交流の場として再解釈されつつ、慰霊という本義を内包。
施餓鬼会(せがきえ)・万灯会:無縁仏や諸霊への供養。寺院・墓地での地域的な慰霊の核。
灯籠流し:水の路に霊を送る鎮魂儀礼。地域によっては環境配慮の演出(回収型・LED)が進む。
お盆は地域で期日が異なります。
七月盆(新暦):7月13〜16日。首都圏や一部都市部。
八月盆(旧盆):8月13〜16日。全国的に最も多い。
沖縄の旧盆:毎年日付がずれ、エイサーが広く行われる(旧暦7月13〜15日)。
加えて、故人が亡くなって四十九日を過ぎて初めて迎えるお盆は**初盆(新盆)**とされ、法要・返礼・提灯の扱いが通常年と異なります。仏事業では「地域の盆期+初盆の有無」を二軸で案内するのが親切です。
① 本義を伝える接客トーク
「迎えて、もてなして、迷わせずに送る」。この三拍子(迎え火/盆棚と供物/送り火)を核に、商品や段取りの意味を語ると納得感が生まれます。
② 盆前の導線設計(だいたい6〜4週間前から)
盆提灯(初盆白提灯/家紋入り・名入れ等は納期注意)
盆棚・真菰・敷き紙・供笥(くげ)・打敷
迎え火・送り火セット(焙烙・麻がら/代替の安全品)
線香・蝋燭(煙少なめ・香り控えめ等の選択肢)
生花・ほおずき・果物の手配(猛暑期の保ちを説明)
返礼品・挨拶状テンプレ(初盆の施主向け)
③ 初盆サポートを“パッケージ化”
白提灯+法要設営用品+返礼+案内状データ+当日の進行表――を一式で提示。説明は「初めてでも迷わない三歩(準備/当日/後片付け)」で。
④ 暦差への配慮
地域カレンダー(七月盆・八月盆・旧暦)を毎年社内で共有。移住者・新規顧客には「この地域の一般的な日取り」と「実家に合わせる選択肢」を並べて提案。
⑤ 次世代への継承支援
子ども向けの小冊子や店頭カードで“意味”を伝える(精霊馬の作り方、迎え火の理由など)。ワークショップやミニ展示は来店動機にも。
⑥ サステナブル対応
回収型の提灯、LEDのあかり、環境配慮の灯籠流し資材、煙・香り控えめ線香など、現代の暮らしに合う代替を用意して選べるように。
⑦ 多文化・多宗派への柔軟性
宗派違い・無宗教志向・国際結婚世帯には「祈りの場を整える」中立的提案(光・花・香・言葉)を。英語の簡易説明カードも有用です。
お盆は、仏教の施しの思想、在来の祖霊観、共同体の鎮魂儀礼、近代の暮らし――そのすべてが折り重なった、日本の“記憶”の季節です。
仏事業に携わる私たちは、意味を伝え、段取りを整え、安心して供養できる環境を提供することで、家族と祖先のつながりを次世代へ手渡せます。歴史を知ることは、品揃えや接客の説得力を高め、地域の文化を支える力にもなります。
――来年のお盆に向け、地域の暦、初盆顧客の見込み、提灯・法要備品の在庫と納期。今日から小さく確認を始めましょう。